ハックル / hackle

ハックルとは、フライフィッシングで用いる毛鉤の素材として使われる鶏の羽、あるいはその羽をフライに巻きつける技術そのものを指す言葉だ。その語源は、中世英語の「hackle」に由来し、これは「くし」や「けばだたせる」といった意味合いを持つ言葉であり、羽を梳いて整える、あるいは毛鉤に巻いて毛羽立たせる様子から来ていると言われている。
ハックルは、特にドライフライにおいては水面に浮くための浮力源として、ウェットフライやニンフにおいては水中で生命感を演出するための重要な要素となる。ハックルに使われる羽は、主に鶏の首の部分や背中の部分の羽(コックネックやサドルハックルなどと呼ばれる)であり、これらの羽は繊維が細かく、適度な硬さやしなやかさ、そして水を弾く特性を持っている。
フライにおけるハックルの役割は多岐にわたる。ドライフライでは、ハックルをフックの軸に密に巻きつけることで、水面との接地面を増やし、毛鉤を安定して浮かせることができる。また、水面に落ちた昆虫の脚や翅(はね)の広がりを模倣し、リアルなシルエットを演出する効果もあるのだ。一方、ウェットフライやニンフでは、ハックルを水流を受けるように巻くことで、水中で羽が脈動し、まるで生きている昆虫が泳いだり、流されたりしているかのような生命感あふれる動きを表現する。このハックルの巻き方や選び方一つで、毛鉤の性能や魚へのアピールが大きく変わるため、フライタイイングにおいて非常に奥深い要素と言えるだろう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました