フライフィッシングにおけるフライのサイズは、主にフックのサイズによって決まります。このフックのサイズ表記には独特のルールがあり、慣れるまでは少し混乱しやすいかもしれません。
フックのサイズ表記の基本
フックのサイズは、通常「#(シャープ)」または「番」という記号の後に数字が続きます。
- 数字が大きくなるほど、フライ(フック)は小さくなります。
- 例:#18フライは#12フライよりも小さい
これは一般的な釣りの仕掛け(例えば、一般的な釣り針の号数やルアーのサイズ)とは逆の表記になるため、特に初心者が戸惑いやすい点です。
サイズの範囲と読み方
フライのフックサイズは非常に幅広く、非常に小さいものから大きいものまであります。
- 小さいフライ(通常サイズ):
- #8、#10、#12、#14、#16、#18、#20、#22、#24、#26、#28、#30、#32など。
- 数字が大きくなるほど、フックのサイズは小さくなります。
- 日本の渓流や管理釣り場では、#12~#16あたりが標準的なドライフライのサイズとされています。
- 読み方は「12番(じゅうにばん)」や「12号(じゅうにごう)」のように呼ばれます。
- 大きいフライ(ラージサイズ):
- #1、#2、#3、#4、#5、#6など。
- これらの数字は、上記のような小さいフライとは異なり、数字が小さくなるほどフックは大きくなります。
- 例:#2フライは#6フライよりも大きい。
- さらに大きなフライ(ソルトウォーター用など):
- #1/0 (ワンゼロ), #2/0 (ツーゼロ), #3/0 (スリーゼロ), #4/0 (フォーゼロ), #5/0 (ファイブゼロ) など。
- 「/0」(スラッシュゼロ)が付く表記で、数字が大きくなるほど、フックはさらに大きくなります。
- これらは主にストリーマーやソルトウォーター(海水)用の大型フライで使用されます。
なぜこのような表記なのか?
この表記は、もともとフック製造の際に使われていた名残と言われています。製造工程でフックのサイズを番号で管理する際、小さいものから順に番号を振っていったため、数字が大きくなるほど物理的なサイズが小さくなるという逆転現象が生まれたとされています。一方、ある程度の大きさのフックからは、別の系統のサイズ表記が用いられたため、「/0」という表記や、数字が小さくなるほど大きくなるという表記が存在します。
その他のフックに関する表記
フックのサイズ以外にも、フックには以下のような特性を示す表記が付いていることがあります。
- シャンクの長さ:
- Xショート (XS): 通常のフックよりもシャンク(軸)が短い。
- Xロング (XL): 通常のフックよりもシャンクが長い。例: 2Xロングは、通常の2番手分長い。
- ワイヤーの太さ:
- Xファイン (XF): 通常よりも細いワイヤーでできている。軽量でドライフライなどに使われる。
- ヘビー (H): 通常よりも太いワイヤーでできている。強度が必要なニンフやストリーマーなどに使われる。
- ゲイプの広さ:
- ワイドゲイプ (WG): フックのフトコロが広い。
- アイの形状:
- ダウンアイ (D/E): アイ(糸を結ぶ部分)が下向き。
- アップアイ (U/E): アイが上向き。
- ストレートアイ (S/E): アイが真っすぐ。
- バーブの有無:
- バーブレス (BL): 針の返し(カエシ)がないフック。魚へのダメージを最小限にするため、管理釣り場などで指定されることが多い。
これらの表記は、フックの種類(ドライフライ用、ニンフ用など)やメーカーによって異なる場合がありますが、基本的な考え方は共通しています。フライを選ぶ際は、ターゲットとなる魚のサイズや捕食しているベイト(餌)の大きさに合わせて適切なフックサイズを選ぶことが重要です。
フライのフックサイズ表記と実際のサイズ(mm)との相関は、残念ながら業界統一の厳密な規格が存在しないため、一概に「#〇〇は〇〇mm」と言い切ることはできません。
しかし、いくつかの傾向や目安はあります。
フックサイズとmm寸法の一般的な傾向
- 数字が大きくなるほど(例:#10, #12, #14…)、フック全体のサイズは小さくなります。
- この場合、主に**ゲイプ幅(フトコロの広さ)やシャンク長(軸の長さ)**が短くなります。
- ワイヤー径(針の太さ)も、小さい番手になるほど細くなる傾向がありますが、これは「XF(エクストラファイン)」や「H(ヘビー)」といったワイヤー径の表記と組み合わされることで、同じ番手でも大きく異なる場合があります。
- 「/0」表記になるほど(例:#1/0, #2/0, #3/0…)、フック全体のサイズは大きくなります。
- これらのフックは主に大型魚狙いのストリーマーやソルトウォーターフライで使用されます。
メーカーやモデルによる違い
- メーカー(例:TMC、がまかつ、カツイチなど)によって、同じ番手でも実際の寸法やワイヤー径が微妙に異なります。
- これは、各メーカーが独自にフックの強度、形状、重量などを設計しているためです。
- 例えば、同じ#14のドライフライ用フックでも、A社のものとB社のものとでは、ゲイプ幅やシャンク長が数mm単位で違うことがあります。
- 同じメーカーでも、フックのモデル(ドライフライ用、ニンフ用、ストリーマー用など)によって、同じ番手でも形状や寸法が大きく変わります。
- 例えば、#14のドライフライ用フックは軽量で細軸ですが、#14のニンフ用フックは重く太軸で、ゲイプ幅も広いことが多いです。
具体的な数値の目安(参考)
あくまで目安ですが、一般的な渓流用のドライフライやニンフでよく使われるサイズと、そのおおよそのシャンク長やワイヤー径の例を挙げます。
| フックサイズ | シャンク長(おおよそ) | ワイヤー径(おおよそ) | 用途のイメージ |
| #10 | 10~12mm | 0.45~0.50mm | やや大きめのドライフライ、ニンフ、小型ストリーマー |
| #12 | 9~11mm | 0.40~0.48mm | 標準的なドライフライ、ニンフ |
| #14 | 8~10mm | 0.38~0.45mm | 標準的なドライフライ、小型ニンフ |
| #16 | 7~9mm | 0.35~0.42mm | やや小型のドライフライ、ニンフ |
| #18 | 6~8mm | 0.32~0.38mm | 小型ドライフライ、ミッジニンフ |
| #20 | 5~7mm | 0.30~0.36mm | ミッジフライ、極小ニンフ |
注意点:
- 上記のmm寸法は、フックのシャンク長(軸の真っすぐな部分からアイの曲がり終わりまで、または全長)やワイヤーの直径を指すことが多く、**ゲイプ幅(針先からシャンクまでのフトコロの距離)**も重要な要素です。
- 特にフックのモデルによって、シャンク長が「2Xロング」「3Xショート」などの表記で、同じ番手でも標準的な長さと異なる場合があります。
結論として
フライのサイズ表記とmm寸法の間に、すべてのフックメーカーで共通する厳密な換算表は存在しません。
そのため、フライを購入したり、自分で巻いたりする際には、以下の点に注意することが重要です。
- 特定のフライパターンに推奨されるフックサイズとタイプを確認する。
- 可能であれば、実際のフックを手に取ってサイズ感を確認する。
- 同じメーカーの同じモデルのフックで、異なる番手のものを比較してサイズ感を把握する。
経験を積むことで、フックのサイズ表記を見ただけで、ある程度の実際の大きさや用途をイメージできるようになります。

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