毛鉤 / fly

毛鉤とは、主に渓流釣りで用いられる伝統的な擬似餌の一種である。魚の好む水生昆虫や陸生昆虫に似せて作られ、鳥の羽や獣の毛、絹糸などを針に巻きつけて形成される。その歴史は古く、日本においては江戸時代にはすでに漁法として確立されていた。
毛鉤の種類は多岐にわたり、大きく分けて水面に浮かせ使うドライフライと、水中に沈めて使うウェットフライ、そして水中で魚を誘うニンフやストリーマーといったタイプが存在する。ドライフライはカゲロウやカワゲラといった羽化する昆虫を模し、ウェットフライは水中で流される昆虫や、羽化途中の虫、あるいは小魚などを模している。ニンフは昆虫の幼虫を、ストリーマーは小魚などを模倣しているのだ。
毛鉤の魅力は、その精巧な作りと、生きた虫に限りなく近い動きを演出できる点にある。釣り人は毛鉤を水面に落としたり、水中で流したり、あるいは引いたりすることで、魚に食いつかせる。素材や巻き方、色合い、サイズなど、それぞれの毛鉤が持つ特性を理解し、その場の状況や対象魚に合わせて使い分けることが、毛鉤釣りにおける醍醐味と言えるだろう。また、毛鉤自体を自作するタイイングも、多くの釣り人を魅了する趣味の一つである。自分で巻いた毛鉤で魚を釣り上げる喜びは、市販品を使うそれとは一線を画する。

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